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「一年に一回だけ、三時草は午後3時ではなく午後3時に咲くんだよ」
「午前3時に?」
「そうだよ。この地域だけの現象で、わたしはそれを見にここへ来たんだよ」
「そうなんですか」
不思議な雰囲気のする人だとは思っていたが、学者か学者のような仕事をしているのだろうか。
「こんな神話を知っているかな?
この屋敷の裏の山の頂上にある神社に伝わる話なんだけどね」
そう言ってその人が話し始めたのは、こんな神話だった。
むかしむかし、この辺り一帯を治める双子の姫神さまがいました。
双子の姉はこの辺りの夜を、
双子の妹はこの辺りの昼をそれぞれ治めていました。
ある日、双子の妹の時間にしか見られない午後3時に咲く三時草が見たくなった姉は、三時草を午前3時にも咲く花にしてしまいました。
しかし、ある日姉は重い病にかかり、亡くなってしまいました。
それからは、毎年お盆の時期、つまり姉の魂が帰ってくる日にしか三時草は咲かなくなりました。
だから、三時草は年に一度、午前3時に咲くようになったのです。
「少し切ない話ですね」
わたしはその話を聞いてそう言った。
「ああ。明日、ちょうど三時草が咲く日なんだよ。
わたしも行くから君も見に来ないかな?」
「…行きます」
わたしは少し考えるとそう言った。
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