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「くそっ、寝ちまった」
どうやら睡眠時間が足りなかったらしい体は正直に休みを取っていた。
時刻は午前十一時五十分。もう二限の半分は終わってしまっていた。
少し強くなりつつある雨の中、傘を差し三限には送れぬようにと歩く。駅にそろそろ着くだろうという時に、ふと、傘もささずとぼとぼと歩く女子高生らしき姿を見た……気がした。
実際にはそんな子は居ないのに、そこに居る。そんな不思議な感覚。
この違和感の正体。俺にはそれが気になってしょうがなかった。女の子がいた、そんな気がした位置へ歩み寄る。
あとニメートル、残り一メートル、その場所であろう場所に着いた。
立ち止まってみる。何も無い、足跡も、そこだけ濡れていないなんて事も。何も変わったことなんてない。
そこらの地面となんの変わりもなかった。
「気のせいか……?」
ポツリと零れた。
その声に返事をするように。
「見えて、居るんですか」
声が、聞こえた。
辺りを見回す。だが誰かが俺に話しかけてきた様子はない。
「見えているのかと聞いているのです!」
今度はハッキリと、俺の……下?
下を向くとそこには俺の胸より下くらいの可愛らしい少女がいた。さっき見えた気がした女子高生とは確実に違う。せいぜい中学一年生と言った所だろうか。
「ごめんごめん、小さくて見えなかったのかもしれな…痛い!!」
足を踏まれた。
「出会うなり小さいとは失礼なのでは?まぁいいです助けて下さい、このままでは私は消えてしまいます」
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