塩分過多もなんのその

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 ベッドから落ちて起床した美祈は、早速冷蔵庫からストロングゼロを取り出そうとして今日の予定を思い出した。そうだ、ラーメン食いに行くんだ。  せっかく口を開けてくれた冷蔵庫からさ何も取り出さず、お湯を沸かし簡単にできるコーヒーを入れた。レモンティーもあるが、基本コーヒーが好きな美祈。  朝ごはんは食パンにスライスチーズ、ベーコンもあったからそれをのせていつも活躍するレンチン。  ベーコンとチーズがいい感じになったのは言うこともはばかられるくらい当たり前のこと。  コーヒーに口をつける。 「あぢっ」  沸騰したてのお湯を注いだのだから暑いに決まっているのに躊躇なく口をつける。などもやめようと思ってもやめられないのは、美祈が既に老人だからか。  詰め込みパンを食べ終わりコーヒーも飲み終わる。それらを全部流しに出し、水につける。気が向いたらやりますと言っていつもやらない。  さて、準備まで時間あるし何かしようかなー十一時から準備すればいいよな、と思いながら壁にかかった時計を見ると、針は十一時を指していた。  さては壊れてるな? と思ってスマホで確認する。さてはやばいな? と思うより早く準備を始めた。  とりあえず外用の服を着てから寝癖やらを直しお化粧をちょいとして外に出る。多分一日で使う分の体力を全て使い果たした。  待ち合わせは十二時、場所はうちの近くの公園。美祈の家は車が入ると面倒な所にあるので、彼女はいつも少し遠いところに車を止めてくるのだ。  急いで準備をしたのに、既に十二時をまわっている。しかし美祈の急ぐは常人の急ぐとは違いかなりのろのろしている。本人は自覚していないところが問題だ。  ほんの僅かの駆け足でシルバーの軽自動車へ近寄る。すると突然、後ろから腰あたりに重い一撃を食らった。そのまま優しく転倒。ぐぇ。 「貴様三十分も遅刻とはいい度胸だなおい」 「ごめん遅れる」 「今言うなよ」  後ろからの一撃はどうやらドロップキックだったらしい。そういえばドロップキック好きだったなと思い出しながら立ち上がる。  そんなドロップキックが好きな、短髪が印象的な彼女の名は蔵元ナナコ。作家としての名で本名は知らない。 「さぁ早く乗り込め! 戦場は待ってくれないんだ!」 「うぇーい」  いつでもアメリカの戦争映画の誰かのようなノリをするナナコに対し、最初こそ戸惑っていたがそういうキャラなんだと思えばええんやと思ってからは平気になった。美祈と同じようにゲームが趣味ということもあり、すぐに仲良くなった。  車で三十分、そこそこ混んでいたが目的地には滞りなくたどり着けた。信号の待ち時間に目的のラーメンを語ってくれたが、そこまで響かなかった。テンションがいつも高いナナコだが、運転テクは割といい。 「ありゃ、やっぱり並んでんな」 「こんなに並ぶなんて……」  軽く店を一周二周できそうなほどの人の量。これも遅刻した罪と思えば軽い。 「そういや美祈、あらっちゃん困らせたってほんとか?」 「誰それわたし知らない」 「わざとらしいなおい」  あらっちゃん、恐らく美祈の担当編集者の新木のことだろう。確かナナコの担当の人と仲が良かったかなんかで友達になったらしい。美祈は唇を尖らせて知らないふり。 「珍しいじゃん、原稿で怒らせるなんてさ」 「んー」  最近彼氏にフラれたんだよねー、なんて言えなかった。いつもふわふわと漂っていそうな美祈になんらかのプライドがあるわけではなく、ただなんて言っていいかわからないだけ。相談するのって難しい。
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