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ガタリ。 バルトリスが座っている椅子が音を立てた。 「諦めたって……お前……本気で言ってんのか」 「ああ」 唇で弧を描いたまま答える。バルトリスの眉が険しく寄せられた。 「一度除隊されれば、もし再入隊出来たとしても二度と元の地位には戻れない。皇帝さえ死んじまえば、お前はお飾りの皇后になって一生閉じ込められるんだ。相手はΩ嫌いの皇子様だぞ? さっさとαの女の側室でも迎えて世継を産ませるに決まってる。お前がどんな扱いを受けるかは目に見えてるだろうが!」 捲し立てるように言う彼に、リューシは首を振った。 「わかってる。でも、無駄だ」 「そんな事言ったってお前……!」 なおも食い下がろうとするのを遮り、冷淡に言い放つ。 「神様相手にはどうしようもない」 テーブルを挟んで勢いよく胸倉を掴まれる。ひと口も飲んでいないグァリがこぼれた。黄金色が木目に黒く染みをつくる。 「俺が……っ……俺がどんなに……!」 言葉を詰まらせる悪友の手をゆっくり外す。あっさりテーブルの上に落ちた無骨な手がギリリと握り締められた。 「もう……帰るわ。急に呼び止めて悪かったな」 リューシの目の前に硬貨が投げ出される。きっちり2人分。 バルトリスはそのまま店を出て行った。
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