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凍りついた空気の中、青年は声を震わせた。それと共鳴するかのように彼の手にしているグラスに残った氷がカタカタと冷えた音を鳴らす。 ──駄目だ。 この青年に己の動揺を見せるわけにはいかない。コリネリは眉間を押さえ、深く息を吸い込んだ。 今すべきは狼狽える事ではない。状況を正確に把握し、国防大臣に報告を上げて協議する事だ。然るべき方策で然るべき対応に当たり、国民の安全を守る事だ。 「ひとまず、」 なるべく冷静な口調になるよう注意を払い、慎重に口を開く。 「なぜデニジリアと戦などという事態になったのか報告しろ。一体何があった」 上官の態度が気休めにはなったのか、青年兵士は幾らか覇気の戻った調子で「はっ」と応答した。 「今日未明、ウィランドンにデニジリアが侵攻しました。陛下は同盟を理由にその報復を──」 「待て、ウィランドンだと?」 思わぬ単語に彼の言葉を遮る。 「我が軍と衝突したわけではないのか」 「はっ、ウィランドンの沿岸部が奇襲に遭ったとの事です」 馬鹿な。隣で呟くダグラスの声を耳で拾いつつ、コリネリは平静の為に肺へ空気を取り込んだ。そうして出かかった似たような台詞は何とか喉元で押し留める。 知っての通りウィランドンの国土は資源が豊富とは言えない。島国で攻め難い上に得るものは少ないはずだ。強いてデニジリアが欲しがるべき国ではない。 デニジリアの狙いは何なんだ。
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