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だから見てみぬふりをしながら洸夜の側にいることを選んだ。それだけでわたしは充分って言い聞かせているのに……。
「美紅はおかんだよ。おかんで幼なじみ」
わたしのことおかんって言い過ぎだよ……洸夜は……。
それにそうだよね。わたし達は幼なじみ。それ以上でもそれ以下でもないよね。
そんなことわたしだってわかっているよ。わかっているからせつないんだよ。
「それなら洸夜はちゃんと彼女のこと好きなの?」
「当たり前だろ」
「なら俺が吉沢さんに告白しても洸夜は怒らないよね?」
「……」
沈黙が続く洸夜の部屋。扉1枚隔てた向こう側の静けさとは裏腹にわたしの鼓動が徐々に速くなる。
クローゼットの中に響き渡りそうなくらいうるさくなる音を静めるようにワンピースの襟元を強く握りしめた。
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