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しばらく続く沈黙を破ったのは洸夜の意外な一言だった。
「美紅は俺にとっていちばん大切な特別な存在。でも結城のこともちゃんと大切にしたい」
「ふたりを同じように大切にするなんて出来るはずないよ。洸夜の中途半端な気持ちが結果的にふたりを傷つけることになるって思わない?」
わたしが洸夜にぶつけたい言葉を代弁するように颯人くんが洸夜を問い詰める。
本当だよ。どっちも大切にしたいなんて彼女の結城さんにも失礼だし、本当の気持ちを隠してまで幼なじみを演じているわたしにも失礼だよ。
こんな失礼な奴なのにわたしはどうしようもなく洸夜が好き。だからそんな言葉ですら嬉しくなっちゃう自分に自分でも呆れている。
「野球で挫折した時に救ってくれたのが結城だから……だから結城が望む限りずっと側にいるって約束したんだ」
重なりあうトロフィーに破れた賞状は洸夜の挫折の傷だったんだ。洸夜が辛いときに支えになっていたのが結城さんならわたしは結城さんに敵うはずがない。
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