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洸夜の家なんて小学生以来行っていない。
なんでわたしが洸夜の家に行かなくなったのかお母さんはきっと理由を知らない。だから簡単に言うけどわたしからしたら洸夜の家に行くなんてとても勇気がいることなのに……。
「お母さんだって町会の当番で忙しいの。こうちゃんうちのりんご好きだったでしょ。持っていきなさいよ」
こうなるとお母さんはわたしが洸夜の家にりんごを届けるまでしつこく言ってくるだろうし絶対にひかない。渋々階段を下りてリビングへ向かった。
「わたし達もう高校生だよ。洸夜がりんご好きだったのは小学生の頃の話しでしょ?今は好きじゃないかもよ……」
「はいはい。じゃ後はよろしくね」とわたしのささやかな抵抗もむなしくわたしの話しを聞き流してお母さんは慌てて家を出ていった。
リビングの床に置かれた段ボールから黄緑色のりんごをひとつ取る。りんごを見つめながら小学生だった頃のわたし達を思い出していた。
小学生の洸夜が好きだった食べ物はわたしのおばあちゃんが育てているこの黄緑色のりんご。そして……たまごサンド。
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