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【月村】と書かれた表札の前。
洸夜の家に来るのは小学生ぶりだから緊張する。相変わらず大きくて立派な3階建ての家を眺めた。
洸夜の家は建築士のおじさんが自宅で仕事をしていたから人の出入りもあって施錠されていなかった。だからあの頃は自分の家のように勝手にドアを開けて入っていた。
もうあの頃とは違うわけだしチャイムを鳴らすべきかとしばらく考えて緊張で震えた人差し指でボタンを押した。
待っている間にこれを着てきちゃってなんか恥ずかしいと思いながらワンピースの襟をつかんだ。
前に洸夜が「まっいいんじゃないか」と素っ気ない態度をとりながらもほめてくれた襟つきグレンチェックのワンピース。
それ以来いちばんお気に入りでもあり勝負服に昇格したこのワンピース。
わたしって意外と単純だよね。とため息がもれた。
誰も出てこないからドアノブに手をかけるとあっさり洸夜の家のドアが開く。今でも施錠されていないことに驚きつつ「おじゃまします」と中に入ったけど、返事はない。誰もいないみたいだ。
「おばさん?美紅です。いませんか?」
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