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片付けが苦手なおばさん。玄関にはたくさんの靴が散乱している。相変わらず靴の脱ぎ場に困る玄関先に靴を脱ぎ捨ててリビングへ向かった。
「おばさん?」
おばさんはいない。おばさんも町会の当番なのかもしれない。置き場に困ったピンクの紙袋を抱えて廊下に出ると2階へ続く階段が目に入った。
この上に洸夜の部屋がある。この家に来たら真っ先に向かっていた洸夜の部屋。あの頃を思い出すように一歩一歩と洸夜の部屋へ近づいた。
「洸夜?」とドアをノックしても返事はなかった。洸夜のことだから寝ているのかもしれない。「入るよ」とゆっくりドアを開けるけど洸夜はいなかった。
見覚えのある懐かしい洸夜の部屋。
昔と変わってずいぶんシンプルな部屋になっていた。
洸夜は野球をやっていたからその時のトロフィーや賞状がたくさん飾られていたはず。なのにそんな過去の形跡もない。
その代わりに洸夜が小学生の頃から使っている机の上には、中学生の頃から付き合っている洸夜の彼女、結城咲良と撮ったプリクラが無造作に置かれていた。
顔が加工されすぎて誰だかわからないけど親密そうにくっつくふたりに付き合って4年記念日と書かれた文字。
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