醜い手をした女の子の話

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 女の子は、誰からも愛される手になろうと努力した。  化粧水、ハンドクリーム、皮膚科でもらった塗り薬。試せるものは、すべて試した。  ある日、後ろの席の子が、女の子が回したプリントの受け取りを拒否した。 「あんたが触ったもの、どれもベトベトするんだよね。汚いからよこさないでよ」  他の生徒も、口々に言った。 「お前、クリーム臭い」 「手を洗えよ」 「何も触るな」 「指紋つけるな」  その日以来、女の子は誰からもプリントを受け取ってもらえなくなった。球技の時間は、一人でボールをついて過ごした。調理実習では一度も食材にさわれなかった。  女の子は学校に通えなくなった。
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