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「久三男くん、何してるの」
僕は彼女が好きだった。
「久三男くーん。おーい」
僕が教室の隅でラノベを読んでいたら話しかけてくる彼女。
「今日はどんな本を読んでるの」
僕がぼうっと考え事をしていれば、微笑みを浮かべながら話しかけてくる彼女。
「また妄想? 兄弟揃ってよく考え事してるよね」
僕にとって彼女の全てが愛おしくて、愛おしくて、仕方なかった。教室の隅で休み時間は読書に費やしている僕みたいなのからすれば、友達になれただけでも奇跡と言ってもいい代物だろう。
本当、あの頃は誰かといて初めて楽しいって思えた。どうして過去形なのかと問われれば、もうその彼女はこの世に存在しないからだ。
厳密にはまだ生きているのかもしれない。でもきっと、その彼女は僕が知っている彼女では既になく、もはや``ただの別物``なんだろう。
既に傷物になってしまった、ただの別物。
いずれ傷物になるのは分かっていたし、傷物にするのが僕じゃないのも分かってた。それは友達だと心を開いたその時から、自覚していたことだ。
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