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確かに、向こうからこっちに送れるんなら、こっちから向こうに届く可能性は普通にある。
自分のテリトリーにうるさそうな性格してたし、こっちから呼び続ければ、姿を現わすかもしれない。
「装備は防寒装備と高山病対策装備を一着。技能球もセットで、分家派より発注いたします」
「一着?」
「私は寒さに耐性があるので。氷点下数十度程度であれば、問題ありません」
マジかよ。そのメイド服姿で氷点下数十度に耐えられるとか、どんな修行してんだ。
いや、冬になるとさっみぃぃなぁ澄男ォ、ちょっくら山奥にある火山までひとっ走りしてマグマ溜まりでひと泳ぎしようぜ、とか平気な顔で毎年言ってたクソババアと比べればマシだけどさ。
よくよく考えれば、身の回りの奴らで人間真面目にしてる奴といえば、久三男か弥平くらいなもんか。
「手筈としては以上です。詳しいルートと、日程は折り入って伝えますので、また十一日に」
弥平の締めにより、会話は終えられた。さてと、と呟き、俺はむくりと立ち上がる。
弥平達、分家の準備が終えるまで俺がするべきは決まっている。修行だ。
一ヶ月修行して編み出した技は、裏鏡に全く通じなかった。今度はもっと相手を抉るような技を編み出さなきゃならない。
結局今までの俺はただ裏鏡とかエスパーダと喧嘩してただけで、ここまでの状況を持ち込めたのは弥平のおかげだ。
本家派当主として、弥平の足を引っ張るような真似はできない。既に幻滅されている可能性だってあるんだから。
俺は居間を出ると、二階へ向かい、愛用の剣を腰に携える。
どうせ汗塗れになるTシャツをベッドへ投げ捨てると、俺は一階の応接室からいける道場へと直行したのだった。
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