裏切りの神官

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 建物は教会。壁は白く、窓は少ない。天井にはロウソクの火がゆらゆらと揺れ、空間を薄暗く照らす。  蛍光灯ではないため部屋が暗く感じるが、教会であるという事実が、薄暗さから醸し出される神聖さを表現する。  中年男性は聖堂内を見渡した。  彼の視界に横たわるは、見るも無惨に惨殺された神官達。ある者は身体を焼かれ、ある者は身体が氷漬けに、ある者は溶けてなくなり、ある者はズタズタに引き裂かれ臓腑が飛び出している。  聖堂内を彩る神聖さとは裏腹に、辺りは血で汚れ、もはや教会としての神聖さは失われていた。天井から吊り下げられたロウソクの灯りが彩る明暗のコントラストが、ただただ聖堂内を薄気味悪く表している。 「佳霖(かりん)様〜。全員殺しましたよー」  聖堂の入り口から、白い学生服のようなもので身を包む茶髪の少年が現れた。学生服のようなものを真っ赤に染め、片手には血まみれのナイフをさげている。切っ先からは、ぽたぽたと真っ赤な雫が床を濡らしていた。 「よし。ではアレを取りに行くぞ」  イエッサー、と地獄絵図の如き惨状を目の当たりにしようと顔色一つ変える事のない少年、十寺興輝(じてらこうき)は、神父服を着こなす中年男性、流川佳霖(るせんかりん)とともに、老獪が座っていた聖堂の奥へと歩を進める。
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