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「あ、碧さん」
頬にふれる。紅い唇にキスをする。不思議だったんだ、君にどんどん惹かれていく事が。
「しばらく、このままでいて」
胸の中に抱きしめる。甘い香りに柔らかい腕。細い腰に手を回す。
「樹里は覚えてないだろうけど」
思い出した記憶の中で、樹里はよく走っていた。
『あの、落としましたよ』
『あ、すみません』
不慣れな改札口で、切符を拾ってくれた樹里。幾つかに別れたホームへの通路を迷い、案内板を探していた時、樹里は向こうから駆け寄って来た。
『あ、あのっ。その切符ならあちらのホームです』
わざわざ教えに来てくれたのか。
『ありがとう、助かります』
『それじゃ、さよならっ』
とても急いでいるのか、また走り去って行く。
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