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【side_樹里】
「樹里、どうして泣くの」
碧の胸に抱かれながら涙が零れて止められなくなる。
「だって、碧さんが辛かった事も知らなくて」
数年前かもしれないけど、碧と出会っていた記憶は残っていない。
「思い出せないって悲しいです」
それを碧は半年間もの記憶を失くして過ごして来たなんて。理解をしていたつもりでいたのに。
「わかってなくてごめんなさい」
泣き出した私を碧がぎゅっと抱きしめてくれる。
「そっちか、樹里を忘れていた事かと思ったよ」
「それはとても……」
言いかけて顔を上げる。恥ずかしさと刹那さが入り混じりとてもくすぐったい。
「びっくりして……」
素直に嬉しいと言えない。碧がずっと想っていてくれた事が泣きそうなほど嬉しい。
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