1207人が本棚に入れています
本棚に追加
「何度も伝えたつもりだったよ」
それってつまり、さっきの答え。
「これは契約じゃないよ。結婚しよう、樹里」
幾度繰り返しても不安だった。碧の本心が見えなくて哀しくなった。
「はい――!」
駆け寄り碧に抱きつく。もう少しの不安も無い。
「樹里が結婚を承諾してくれたから、まさか愛してもいいなんて聞かれるとは思わなかったよ」
そういえば、勢いあまってそんな事を口走った気もする。碧が倒れてすっかり忘れていたけど。
「これからが大変かな」
「え……?」
見上げた碧を見てドキッとする。こんなに真剣な表情を初めて見る。
トントンッ―― 扉がノックされ、祐希くんが顔を出す。
「兄貴、親父から電話」
「やっと来たか」
碧はサイドテーブルの上に置かれた電話へと向かう。内線で部屋で電話を受けるみたい。
「二人共、向こうで待っていて」
最初のコメントを投稿しよう!