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椅子にもたれた身体がだんだんと重くなる。
「わ、樹里さんっ」
倒れ込みそうになった腕を祐希くんが引っ張る。もう一度椅子にもたれ直しても真っ直ぐに身体を保てない。
「どうして彼女にだけ、こんなに強いやつ」
「あら、手違いじゃなくて」
二人のやり取りがなんだか遠く聞こえる。
「ねぇ、契約って何かしら」
「契約……?」
「いいわ、貴方は何も知らなそうね」
私さっき…… 美奈さんになんて言って…… はっきりとしない意識とさらに速くなる脈に呼吸が荒くなっている。
「樹里さん、お水」
祐希くんが口元にコップを近付けてくれる。喉に染み込んでくる冷たさが気持ち良い。
「兄貴はまだかよ」
身体を支えようとしてくれる祐希くんの腕に安心する。顔は見上げられない。美奈さんの白い太腿あたりにまだ目がうっすらと向く。
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