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「祐希くん、ごめんね……」
どうしてもまぶたが開けられない。遠のく意識の中、身体がふわっと宙に浮く。
「ごめんな、待たせて」
「兄貴、遅いよ」
私を抱き上げる碧と、そばから祐希くんの声。
碧―― 耳元に囁かれる愛しい人の声に、ようやくほっとして息ができる。
「悪いがこのまま帰らせてもらうよ」
「お父様とは話されたのでしょう? 私を無下にできまして?」
私を抱き抱えたまま、二人の会話が続く。
「業務提携は既存のままだよ、正式に書類も交わす」
「……お父様ったら」
よくわからない。今はもう、ただ眠くて。
「はっきりさせたはずだ。本当にこれきりだ、美奈」
後ろから美奈さんの声がするけれど、それは少しずつ遠ざかる。
碧の腕の中で眠りに堕ちた――
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