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微睡みの中で聴こえる声が耳に残ってる。
『兄貴、こんなんで引き下がるの』
『いいんだ、彼女はもう樹里に手は出せない』
あの会話はどういう意味だったのかな。
「ね、碧。昨夜――」
ひゃっ。耳朶かぷっと。背中を指先がツーっと。
そこで改めて。私、キャミ一枚なんですが、何故でしょう。
「俺しかいないでしょ」
「み、見たのっ」
着ていたワンピはどこへやら。
「何をいまさら」
聞いてみたいのに、くすくす笑う碧の瞳がどんどん近付いてきて。重なり合う唇に、タイミングをすっかり奪われてしまった。
優しい手が愛おしむように肌にふれてくる。口づけは甘く下へと下りていく。
碧の鼓動を感じているうちに、もう何も考えられなくなっていく。
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