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「あれから牧瀬家は大丈夫なの」
祐希の耳打ちに笑って応える。
「言っただろ、もう樹里には手を出させない」
カウンターキッチンの中、バタバタと祐希の為にお菓子を作る。樹里の姿を目で追いながら祐希に返事をする。
「いったいどんな手を使ったの」
「規模を拡大させたんだよ」
将来経営に携われば直に理解できるだろう。
「牧瀬家がうちを崇めたくなる様にさ」
次期社長として正式に契約を交わした。当然それは父さんも了承済の話。
「ただし、美奈とはこれきり。それをご理解頂いた」
一度は婚約をしていた相手。これが美奈にできる最大限の誠意。
「俺はてっきり、兄貴は怒り狂うかと」
はらはらしていたと祐希がホッとした表情を見せる。
たとえ愛が存在しなかった相手でも。美奈が俺を求める想いを考えると非情にはなれない。
「兄貴は大人だなぁ」
違うよ、祐希。愛する者が俺を変えたんだよ。
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