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誰も愛せない―― 愛しちゃいけない。頑なに心を閉ざしていた時なら、もっと冷酷でいられた。
「楽しそう、何を話しているの?」
焼き立てのクッキーと紅茶を運ぶ。樹里の笑顔が安らぎをくれる。
「挨拶に行った時の話かな」
祐希に目で合図を送る。美奈との件は、もう樹里には関わらせたくない。
「碧ったら、母さんにすっごく気に入られちゃって」
「マダムキラーだもん、兄貴」
二人で俺をネタに笑うなよ。仲が良すぎて俺は時々二人に笑われる。
「樹里、支度はできてる? もうすぐ出る時間だよ」
「いけない、ちょっと待っていてね」
リビングを駆け出す樹里と、パクパクとクッキーを口にする祐希。
この穏やかな時間がいつまでも続いたなら。
「今日はなんだっけ?」
「披露宴で出すメニューの決定と、衣装合わせ」
ウェディングドレスをオーダーしようとしたら、樹里に断られた。
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