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エピローグ
眩しいほどの春の木漏れ日が差し込み、遊歩道には優しい風が吹いている。
「樹里、お待たせ」
前より大人の男性の表情になった碧が、にこやかな眼差しで歩いて来る。
「手を出して」
私の手の平の中にリングをひとつ落とす。
「指輪! これあの時の?」
サイズが合わなくて指にはめたらくるくる回っていた指輪だった。
「初めての碧からのプレゼント」
嬉しくて泣きそうになった。まさか、もう一度贈ってくれるなんて思ってもいなかったから。
「私も…… 碧にプレゼントがあるの」
リングピローを使える時が来たの、碧は私の言葉の意味がわからず目がきょとんとしている。
「初めての枕にリングピローを使うと、赤ちゃんはとても幸せになれるそうよ」
「えっ……」
ふわっと身体が宙に浮く。碧の両腕が腰を持ち上げ振り回そうと…… だ、だめっ。
「赤ちゃんがびっくりするわ」
「樹里、ありがとう」
ぎゅっと私の背を抱きしめて碧が笑う。
これは愛の途中―― 私達の物語はこれから始まる。新しい命と共に。
【完】
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