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碧さんを恨めしげに見上げても、相変わらずの笑顔。社長室でもスマートさは変わらず。
「どうぞ、樹里さん」
碧の部屋にあるよりも、がっしりとした黒い革張りのソファへ。
「突然で驚かれたと思いますが」
なんだ、社長は顔をしかめながら私達の正面へ腰を掛ける。
こ、怖い。威圧感がすごくて、私はおどおどしちゃうのに、碧はあさっり言い放った。
「結婚しましたよ、父さん」
こちらが樹里さんです―― 私の肩を抱き寄せる。
はい、私が樹里です。……じゃないっ。
「お父さん!?」
えーと。確か此処は社長室……!
「碧、説明をしてくれないか」
「言葉通りです。結婚しました、樹里さんと」
もぉ、解消したい。碧さん、ずるい。
なのに言っちゃう? 社長を目の前にして。
「俺の可愛い人です」
碧の声にドキッ。顔から火が吹きそう。
でも、これは契約結婚―― ぎゅ、って。心がきしむ音がする。
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