夜会

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「、お帰りなさいませ、旦那様」  珍しく帰宅したフィランドルを執事と使用人一同が出迎える。先触れを出しておいたから晩餐も用意されている。 「アリーから手紙は届いていたか?」 「いえ」 「じゃあミエナ」 「いえ」 「それじゃあドーラ」 「ドーラ様はございます」 「じゃあ今度の夜会はドーラの番か」 「他にテーランス領の領主代理から手紙と先代様からの手紙。それとローズマリー様と仰る方にグレンナ様と仰る方からも」 「領主代理はブラー、お前に任せる。父上からの手紙とローズマリーとグレンナは寄越せ」  領主代理……先代の公爵の執事が行なっているのだが、フィランドルは公爵になってから一度も手紙を見た事はない。ブラーと呼ばれた執事は、少しだけ落胆して了承した。そのブラーの落胆した表情すらフィランドルは気づかない。楽しそうにローズマリーとグレンナの手紙とドーラの手紙を読んでいる。  現在、フィランドルには3人の恋人がいる。アリー。ミエナ。ドーラ。それぞれ侯爵や伯爵の夫人。と言っても後妻であり、夫婦仲は冷え切っていて夫妻揃って愛人がいるのが当たり前。そういう女性達だ。そういう後腐れの無い恋人が3人と、一夜の恋の相手が何人もいる。ローズマリーとグレンナはとある子爵や伯爵のご令嬢達で、一夜の恋の相手として自ら売り込んできた。  このフレーティア王国では、婚前交渉に関して何も言わない。処女(おとめ)である事を望まれるのは、王家に嫁ぐ女性か王家から嫁ぐ王女くらいのものだ。故にどうせなら、美形の男……フィランドルに一夜の夢を与えられたい。と望む令嬢が後を絶たなかった。
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