1.

1/1
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ

1.

 タカシは、スクラップ工場に運ばれてくるロボットの解体作業のアルバイトをしている大学二年生。工場は三交代制で、今日の彼は22時から翌朝6時までの深夜勤務だ。  このところ、老人の人口が減って介護用ロボットが余り、廃棄処分のため、この工場へ大量に持ち込まれる。今も、10体が持ち込まれて、床に転がした。  この介護用ロボットは、男と女があり、好みの顔を選べる。その表情は、リアルなマネキン人形よりも人間のそれに近い。かといって、頭のてっぺんからつま先まで人間と同じとまではいかない。町中でこれが歩いているところとすれ違うと、若干動きに滑らかさがないし、肌がツルツルでテカっているので、ああロボットかと気づくことが出来る。  でも、会話は完璧。感情が豊かで、冗談もうまく、人と会話していると錯覚するほどだ。声質までそっくりなので、人体を義体化したサイボーグ、と本気で考える人がたくさんいる。人間と思い込んで、遺産を相続するとまで申し出た老人がいたほどだ。  それだけ人間っぽいロボットが、目を開けて床に転がっているのだから、実に不気味である。  あいにく、二人の同僚が風邪だとか体調不良だとかで欠勤し、今日はタカシ一人。彼は、ロボットたちに目を落とすと、室内の寒さも手伝って、思わず身震いした。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!