12人が本棚に入れています
本棚に追加
今日は、狭く暗い部屋で眠るように命じられた、トイレとベッド以外には何もない無機質な部屋だ。家には帰れないらしい。
狭いベッドにうずくまり、今日起きた信じられないような出来事、宮下が死んでしまったこと、僕が殺してしまったらしいこと、今日の仕事に何も手をつけていないこと、明日観る映画をまだ決めていないこと、いろいろ考えていたら、自然と涙が出ていた。
明日、目が覚めたら全てが夢だった、なんてことがないだろうか。
宮下の家族や恋人にはどう説明して、どのように謝ればいいのだろうか。
会社の人たちにはなんて言われるだろうか。
今日が終われば、土日が待っている。
泣きながらいろいろ考えているうち、眠りについていたようだ。
僕は、自分のデスクの前に立っている。
こっちの世界の方が現実のような、感覚や感触がとてもリアルな世界だ。
つい、やっぱり今日起きたことは全部夢だったんじゃないか、なんて甘い考えを起こしてしまう。
しばらくしてもフロアには誰もこないので、廊下に出て周りの様子を確認してみる。
廊下の向こうから宮下が歩いてくるのが見える。
宮下は、またスマートフォンを見ながら歩いている。
僕の存在には、これっぽっちも気づいていないようだ。
曲がり角から飛び出して驚かせてやろうと思ったが、やめた。
宮下が声の届きそうな距離まで近づいたのを確認する。
僕はなんだか照れくさくて、人差し指で頭を掻きながら、少しはにかんで言う。
「おはよう、宮下」
声をかけられた宮下が、こちらに顔を上げた。
「バン!」
最初のコメントを投稿しよう!