傘が守ってくれるから

1/2
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ

傘が守ってくれるから

差し出された傘に私は戸惑った。 今日は快晴。 傘は私をすっぽりと覆って、日陰を作っていた。 「あの……」 傘の持ち主を見上げた瞬間に溜まっていた涙がこぼれ落ちて、地面に小さな点を作った。 私はいけない、と涙を拭う。 「あの、雨は降っていないのですが……」 もう一度私は傘を持つ彼を見上げて言った。 「うん」 彼は確か同じクラスの小寺君だ。眼鏡がよく似合う線の細い小寺君。ただ、その行動が奇怪だとクラスでは変人扱いされていた。 この傘もそんな彼の不思議な行動の一つなのだろうか。 「じゃあ、なんで、傘……」 「悲しみを凌げるように」 私は意味が分からず目を瞬かせた。 「傘が守ってくれる」 そう言った小寺君の目は真剣で、迷いがなかった。 私は。 「ありがとう」 そう答えて。下を向いた。我慢していた涙が次から次に溢れ出して、地面の傘の陰を濃くした。 小寺君は黙って傘を差し続けた。 私はしばらく傘の中で泣き続けた。 小寺君は何も尋ねなかった。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!