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呼んだだけじゃ気付かないだろうからと肩を掴んだら、
奏くんは予想以上に驚いた顔をして私を見つめた。
不意に合ってしまった視線に、慌てて少しだけ反らす。
微かにイヤホンから漏れる音からは、英語のような声が聞こえた。…洋楽?
そんな事を微かに頭の隅で考えながらも、私は気を揺るがさずに再び口を開いた。
「来週も、よろしくね!」
あ、そうだ、笑わなくちゃ。
できるだけ口角を上げてみたけど、…変な顔になってる自分の姿しか想像できない。
というか、こんな事を考える余地があるくらいに返事が来ない。
「……」
失敗したかなと恐る恐る視線を合わせると。
奏くんはちょっとだけ微笑んで頷いて、それから静かに部屋を出て行った。
「わ…笑った…」
勇希くんの驚いた声が聞こえた瞬間、あまりの安堵感にその場にへたりこんでしまった。
これは…成功?いや、大成功じゃない?
やっぱり、自分から行動してみなくちゃ分からないことは必ずあった。
知りたい。みんなのこと、もっと。
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