1 始まり

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私が一人で怒っているのを見て、おじいちゃんが「さあさあ」と話題を変えた。 「自己紹介も終わったことだし、塾らしい事しようかのー。」 呑気なおじいちゃんの声で、やっと勉強が始まった。 『今日は数学』と決められているらしい。 …おじいちゃんの説明は分かりやすいよ? だけど…。 全く、分からない…。 それは周りも同じみたいだった。 「今日は暑すぎるな…。 せっかくの美肌が汗でびちょびちょだ。」 「あ、そう。 はい、扇風機〜!」 「あっ! せっかくのヘアスタイルが台無し!」 やはり、私の勘は当たっていたみたいだ。 聖也くんは、勉強よりも肌や髪型を気にしてばっかり。私よりも女子力が高いよ。 それを面白がってからかう勇希くん。 「ごめんね…。 聖也はナルシ…っぽいけど、いい奴だから!」 「あ、うん…。」 私がじっと見ていたせいか、その度に説明してくれる犬太郎くん。 なんとなくだけど、だんだん彼らの人柄が見えてきた気がする。 ちょっとばかり変わった人もいたけれど、みんな、いい人みたいだ。優しい人達で良かった。 …一人を除いて。 いつの間に起きていたのか、一人黙々と、シャーペンを走らせている。 今は各自問題を解く時間なのだけれど、奏くん以外の男子がうるさくて…なかなか集中できない。 犬太郎くんはなだめているだけなのだけれど。 「あのさぁ。」
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