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私が一人で怒っているのを見て、おじいちゃんが「さあさあ」と話題を変えた。
「自己紹介も終わったことだし、塾らしい事しようかのー。」
呑気なおじいちゃんの声で、やっと勉強が始まった。
『今日は数学』と決められているらしい。
…おじいちゃんの説明は分かりやすいよ?
だけど…。
全く、分からない…。
それは周りも同じみたいだった。
「今日は暑すぎるな…。
せっかくの美肌が汗でびちょびちょだ。」
「あ、そう。
はい、扇風機〜!」
「あっ!
せっかくのヘアスタイルが台無し!」
やはり、私の勘は当たっていたみたいだ。
聖也くんは、勉強よりも肌や髪型を気にしてばっかり。私よりも女子力が高いよ。
それを面白がってからかう勇希くん。
「ごめんね…。
聖也はナルシ…っぽいけど、いい奴だから!」
「あ、うん…。」
私がじっと見ていたせいか、その度に説明してくれる犬太郎くん。
なんとなくだけど、だんだん彼らの人柄が見えてきた気がする。
ちょっとばかり変わった人もいたけれど、みんな、いい人みたいだ。優しい人達で良かった。
…一人を除いて。
いつの間に起きていたのか、一人黙々と、シャーペンを走らせている。
今は各自問題を解く時間なのだけれど、奏くん以外の男子がうるさくて…なかなか集中できない。
犬太郎くんはなだめているだけなのだけれど。
「あのさぁ。」
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