16人が本棚に入れています
本棚に追加
疾走
巨大な豪邸の前。
ひとつの小包が厳重に包装されて届けられた。
ここはある大手の企業の会長宅だ。
朝早くから使用人がバタバタと走り回っているのは
ここの会長が、自分の決めた毎日の時間を守らないと
ひどく不機嫌になるからだ。
意にそわないことがあると、
義理の息子の社長だろうと、学生のアルバイトだろうと
罵詈雑言を浴びせかける。
酷い癇癪持ちで短気で気難しい、
いわゆるワンマンな独裁経営の企業だった。
自分一代で
資本金500億の企業を引っ張っているという矜持もあるのだろうが
会長に嫌われては生きては行けない社内関連や家では、
誰も何も言えない王様であった。
見慣れない荷物に、使用人は用心して開いてみた。
「スケボー・・?」
宛名や宛先を見ても、薄れてよく見えない。
この家には、まったく相応しくないものだな・・。
使用人はきちんと包み紙を畳むと、
裏口に出てスケートボードを立てかけた。
戸口を締めると、庭で放し飼いにしている二匹の大型の犬が走ってくる。
二匹は新しいおもちゃをくんくんと嗅ぎまわり、咥えて走り出した。
二匹はじゃれ合いながらスケートボードを取り合うと、
ころころとスケートボードは扉の下の隙間から、外に転がって出てしまった。
犬たちは、しばらく扉の下から大きな鼻を並んで出していたが、
諦めてまた新しいおもちゃを探しに戻った。
最初のコメントを投稿しよう!