16人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
疾走
巨大な豪邸の前。
ひとつの小包が厳重に包装されて届けられた。
ここはある大手の企業の会長宅だ。
朝早くから使用人がバタバタと走り回っているのは
ここの会長が、自分の決めた毎日の時間を守らないと
ひどく不機嫌になるからだ。
意にそわないことがあると、
義理の息子の社長だろうと、学生のアルバイトだろうと
罵詈雑言を浴びせかける。
酷い癇癪持ちで短気で気難しい、
いわゆるワンマンな独裁経営の企業だった。
自分一代で
資本金500億の企業を引っ張っているという矜持もあるのだろうが
会長に嫌われては生きては行けない社内関連や家では、
誰も何も言えない王様であった。
見慣れない荷物に、使用人は用心して開いてみた。
「スケボー・・?」
宛名や宛先を見ても、薄れてよく見えない。
この家には、まったく相応しくないものだな・・。
使用人はきちんと包み紙を畳むと、
裏口に出てスケートボードを立てかけた。
戸口を締めると、庭で放し飼いにしている二匹の大型の犬が走ってくる。
二匹は新しいおもちゃをくんくんと嗅ぎまわり、咥えて走り出した。
二匹はじゃれ合いながらスケートボードを取り合うと、
ころころとスケートボードは扉の下の隙間から、外に転がって出てしまった。
犬たちは、しばらく扉の下から大きな鼻を並んで出していたが、
諦めてまた新しいおもちゃを探しに戻った。
最初のコメントを投稿しよう!