疾走

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疾走

巨大な豪邸の前。 ひとつの小包が厳重に包装されて届けられた。 ここはある大手の企業の会長宅だ。 朝早くから使用人がバタバタと走り回っているのは ここの会長が、自分の決めた毎日の時間を守らないと ひどく不機嫌になるからだ。 意にそわないことがあると、 義理の息子の社長だろうと、学生のアルバイトだろうと 罵詈雑言(ばりぞうごん)を浴びせかける。 酷い癇癪(かんしゃく)持ちで短気で気難しい、 いわゆるワンマンな独裁経営の企業だった。 自分一代で 資本金500億の企業を引っ張っているという矜持(きょうじ)もあるのだろうが 会長に嫌われては生きては行けない社内関連や家では、 誰も何も言えない王様であった。 見慣れない荷物に、使用人は用心して開いてみた。 「スケボー・・?」 宛名や宛先を見ても、薄れてよく見えない。 この家には、まったく相応しくないものだな・・。 使用人はきちんと包み紙を畳むと、 裏口に出てスケートボードを立てかけた。 戸口を締めると、庭で放し飼いにしている二匹の大型の犬が走ってくる。 二匹は新しいおもちゃをくんくんと嗅ぎまわり、(くわ)えて走り出した。 二匹はじゃれ合いながらスケートボードを取り合うと、 ころころとスケートボードは扉の下の隙間から、外に転がって出てしまった。 犬たちは、しばらく扉の下から大きな鼻を並んで出していたが、 諦めてまた新しいおもちゃを探しに戻った。
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