黒い何か

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甥はまず台所へ抜ける襖を開け、そこからそっと顔を出しトイレへと伸びる廊下の様子を窺ったのだが――次の瞬間、驚いた声をあげながら布団へ駆け戻り、ぎゅっと母親へしがみついてしまった。 眠気と苛立ちを混ぜ合わせながら母親がどうしたのかと訊ねると、甥は「トイレの前に黒いのがいて恐くて行けない」と泣きながら訴えた。 どうせ寝ぼけていたんだろうとため息をつきながら母親は起き上がり、こんどは一緒に台所へ行くも、当然と言うべきか、覗いた廊下は闇が詰まっているだけで何も存在してはいなかった。 結局このときは母親に付き添われながら用を済ませた甥だったが、後日この話を聞いた私はその黒いモノとはどんなものだったのかを訊ねた。
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