※章 魔女の掟

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暗闇に白い顔が浮かぶ 否、顔ではなく、白い面 暗闇に溶け込むように立つ人々中心には地面に膝を落としている人が一人、胸を押さえている 膝を落とす者の前に立ち、杖を首のあるであろう場所へと向けた 「忘れぬよう、心に刻め」 「……」 「汝、この村を出た時より沈黙を貫け。意味のない言葉など必要ない」 「……」 「汝、人前に姿を晒さぬよう。真を知るものなど存在せぬほうが良い」 「……」 「汝、魔女の知恵を漏らすことなく土に還るその時まで在れ」 「……」 「沈黙を応とし、成人の儀を終える」 言い終わるや否やまるで顔も見たくないと言うように周りにいた人は散っていき、最後に一人…杖を掲げていた黒衣だけが残る 「魔女の掟もあるからってあんたに知識は授けた。でも今日で終わり」 「…」 「長が死ぬまでこの掟は覆ることはない。せいぜい生き延びることね」 蹲る足元に袋を投げつけた 袋を取ることもせずに仮面に覆われた顔をわずかに上げると容赦のない杖の一撃が顔を襲った 赤い血が仮面の下、黒い布をつたって地面を濡らしていく 「さっさといけば?どうせ外に出てもあんたを見る奴なんて一人もいない!魔女になれなかったけど人間にもなれないあんたは中途半端。村の外で楽しむんだね。そして二度と帰ってくるな!!」 自分が振り上げた杖を見たくもないという風に地面に放り投げて足早に去っていった とうとう一人もいなくなってしまった場所でのろのろと袋を掴みながら立ち上がった 震える体を叱咤して、村の出口…外の世界へと歩きながら、杖のせいでヒビの入った仮面を直す その姿は闇に消えていく 仮面の中の顔は……
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