三章 屍の楽園と魂者___繋がる物語

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執事によって置かれたティーカップを傾けながら、初めに口を開いたのは長い髪の魔女…確か、ランフィと呼ばれていた 優雅な手つきで音も立てずに置かれたカップから視線を外し、全員を見て……俺を見る 「そうねぇ。きっと我が君は私達が人間と一緒に行動していると言うことが不思議で仕方がないのでしょう?」 「ほら、魔女は人間と馴れ合わないから」 「……」 彼女たちの言う通り、魔女は森の奥深くに魔女のみで暮らしている 交易などでほんの少しは言葉を交わしていたものの、会うことはほぼなかった 「まだ我が君が知らない昔の事なのだけれど、私達も我が君の村にいたの。その時の長…前長ね。彼女は先見の力を持っていたの。同じ線上の物事を断片的に見ることができたのよ」 「私達は未来を知った。判断を迫られた。…間違えることは許されなかった。なぜならその時、私の友人であるリアナには子が宿っていた」 「知っていて?……いえ、知らないなら我が君は聞かなければいけないわ」 魔女である二人が話したのは、俺が考えていたよりもとても…真実ことのできない事実 前長と呼ばれた魔女が見たのは、今回の魔女の村を襲うものと同じようなもの ただ、一つ違うのは結末 「魔女には女しかいない。それは決められた種の血筋によるもの……だけれども、その時東にいた王が死んだの。王はね、魔女の中で唯一男の性で生まれるのよ。我が君のように」 「王がいなければ私達は繁殖できない。私達は交わる時、一時的に男の性を得る。それは私達の王である貴方の姿を借りているから」 「王が死んだ時、魔女の誰かの腹に宿る命…居なければ、一番幼い魔女が男の性を得るわ。それが私達の村だった。でも先見は恐ろしい未来を見せた……そう。村と取引をする国が滅びる未来をね」 くすくすとあの頃はこうだった、楽しかったと笑いながら付け足していく話 でも、国が……滅びる? 赤い口から告げられた言葉に俺は目を見開く…だけれども、その言葉に一番反応を示したのはリグレアだった それはそうだろう 国とは、自分の住むリンクドールのことを指していたのだから 「兄様…兄様はこのことを知っていたのですか?」 「ああ。知っていたとも。だがまず話を聞かないといけないよ?」 「……わかりました」 「貴方の弟王子は聞き分けがいいのね。私好きよそういう子」 ランフィが細い指をリグレアの顎に這わせているのを、俺は無意識のうちに握っていた 驚いた顔をしている、と思う 慌てて手を離すとわずかに握った跡が手首の周りを彩っていて、目を逸らした 手を掴まれたランフィは隣に座る短い髪の魔女ーーマティーアと秘密話をした後に、俺の事を微笑ましそうに見た まるで、あの時血塗れの手で俺の頬を撫でた魔女のように 「ふふ、次は気をつけるわぁ。……話を戻すわね?私達は人間が滅んでも生きていけるの。だけれども、それでは駄目。国一つを滅ぼした後に私達の村も襲われると言われたわ」 「私達はいい。……だけど王が死ぬのは許されない。王が現れるには、王自身が長い時を生きなければならない。あとはなかった…だから、私達は襲いかかる災厄を探して止めようと村を出た」 「その事でねじ曲がってしまった軌跡は私達が災厄を見つける前に村を滅ぼしてしまったのよ」 結局…… 「だって無理だもの。あの時見たでしょう?災厄は魔女、どうりで見つからないわけね。……でも私達は賭けに勝ったの。私達がどうしようもできなかった災厄に殺されないよう生まれた王は村を追い出し、人の世に寄り付かないように呪いを賭けた。村全員の魔法よ」 「呪い……だって、じゃあ、あんたらは知っていて…!」 「勿論よ。でも、私達は貴方がどこにいたのか知らなかったもの。だから消えた弟王子が我が君の魔力を……王の力の残滓を残していたのを感じたのはとても嬉しかった!」
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