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終章 安息の地を招く
No sideーー
「私の可愛い坊や。早く産まれて顔を見せて欲しい」
静かに、お腹をさする手
波打つ白い髪は若葉色の布でまとめられていて腰の下まで、伸びている
「坊やはどんな子に育つのでしょう。私は前王を見たことがないからわからないのだけれど、きっととても素敵になる」
日の見えない深い森の、鈴なりの木の下で本を片手に微笑む姿に…隣に座っている同じ髪の女も大きくなったお腹に触れた
あまり動きのない
けれども確実に感じる魔力の塊に、順調に育っていると嬉しさを滲ませる
産まれてくる子がどんなに過酷な道を歩もうとも
もう既に、運命付けられた道筋があるとしても……私の愛はあなたの心の中にあると
「私の可愛い坊やは、真っ直ぐに育って欲しい」
彼女の願いは霧の中に消えていった
産まれた幼子は…いずれ村を追い出されるという
愛情すら渡すことができず、言葉と力で伏せた姿に痛みを覚えたとしても
せめて最後の姿だけはと思い、その小さな頭に杖を振るった
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