終章 安息の地を招く

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「早く行かないと…」 そう思って、人の住む大きな場所へと足を進める ランフィとマティーアはきっと無事だろうけれども、無性に顔が見たいと思ったんだ きっと言葉を交わしたから? それとも彼女達が、俺と同じだからなのか 「兄様に話を聞かなければならないし、別れ際が騒がしかった。何か事が起こったんだろう」 「…?」 「ほら、兄様の元へ騎士達が駆け寄っていただろう」 「覚えてない」 「だろうな。私も一度見ただけの人間の顔を思い出せ、と言われても無理だ」 城についた時、同じ場所で優雅にお茶を飲んでいる二人に引きずられるように連れてこられた そんなに時間は経っていないはずだけれど… でも話を聞くと、俺達はランフィが帰ってきた時より半月も遅かったらしい そんなに? 「待っていたわぁ。遅いじゃない。こんなに時間がかかるなんて、聞いてないわよ」 「ランフィ、仕方がない。私達ならともかく、人間は魔力もないから転移にはお荷物。それに怪我、してた。大丈夫だった?」 「だい、じょうぶ」 「第二王子の事、呼んでたわよぉ。早く行きなさいな。私達はここでのんびりしているから」 「わかった。では」 リグレアが呼びにきた年の若い男に連れられていく あいた椅子に座り、目の前に出された飲み物を見てから二人のことを交互に見る 二人は、これからどうするんだろうか 「我が君の姿を見たから、私たちもそろそろ行かないといけないわ」 「行くって…何処へ?もともと人の世界にいたんだろ」 「ええ。でもそれももう終わり。そうねぇ…場所は前の村があった場所にしましょう。魂は廻る。知識も残ればまた魔女の村ができるでしょう?」 「あ、我が君は来ないで。お邪魔虫になってしまう」 静かに音を立てて飲む姿に、なんとなくだけど察した それもだけれどもう一つ…俺に、村のことについてをあまり思い出させないようにしているような 気のせい、ではないと思う 「俺は気にしていない。決められた道だったんだろ。なら、仕方がない」 「ふふ、我が君はオトコマエね?でも嫌な事があったら逃げてきても良いんだからね?私達は我が君のためならなんでもできるの」 「あの第二王子が…ああ、もう違うけれど。嫌なことをされたら私が懲らしめてあげる。……ごめんなさい、少し心を見た」 「知ってる」 覗かれる感じがした 困ることではない…が、一言は欲しいな 「その、我が君って言うのはやめて欲しい。俺はまだ魔法を使いこなせない半人前だし…なんか、嫌だ」 「いいわよぉ。じゃあ、そろそろ行くわね。彼も戻ってきたみたいだし。王様に宜しくねぇ」 「様子を見に来る。別に、ここにいなくてもいいけれども、魔女の結界が貼られているお城が安全」 「…ありがとう」 礼を言うと、そんな、良いのにと晴空に似合うような綺麗な笑みを返された 立ち上がるのを見送る 別れの挨拶を言わないのは、一生の別れではないから
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