番外 願いと儀式と

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番外 願いと儀式と

本編の続きと思って読んでくださいませ。 ちょうど番外挟んだ後のお話です。 ー+ー+ー+ー+ー わからない…と自分自身に言い聞かせていたのは俺自身の心を守るためだった? 優柔不断に、選ぶことを前にどうしようと狼狽えて見せたものも 俺が手を伸ばして選ぶことで変わってしまう それがひどく怖く思えた でも、恐怖を知ることができたのは、安心できる場所にいることができたからなんだ あの日、リンクドールの王となったリグレアの兄エレンに呼ばれた部屋で、二人が話すのを隣で聞いていた どこか居心地の悪い場所… 「リグは王族から籍を抜くつもりだね」 「それについては前にも言いました。私がいては、色々と周りが煩い…兄様は有能でも、まだ若いから。陰から覗いたようだけど…昨日アゼル伯爵に色々言われていたのを見てしまって」 「…まあ、あれはねぇ。リグの派閥筆頭を名乗っていたようだし、気に入らないんだろう。彼は自分の身が可愛くないようだ」 「…程々にしてください」 「わかっているよ。周りが見えていない愚物にちょっとした種を仕込むだけだから。…別に王族から籍を抜くことは、俺は反対していないんだよ?どちらかと言えばその方が都合がいいのはわかるからね」 都合がいいと俺の方を見る二つの目 どこか固い言い方をするリグレアとは違い、人の前と今で話し方を変えるエレンは、綿に包んだような口調なのに本質を見ていた 「…?兄様は、何かにスノアを利用するつもり…なんですか」 「それはない。彼女達から色々と聞いてしまったから、余計なお節介かもしれないけど、俺はリグの想いに応えてくれるのであればいい。たとえそれが人間ではなくても俺の家族になるのだから…おいで」 呼ばれ、リグレアが抱きしめられる 「戦う者の体になったね。強くなった。我が弟ながら誇らしいよ。これからも俺の近くで、力を奮ってくれるかい?」 「背は兄様の方が高いですよ。もちろん、私にできることであれば」 「可愛い俺のリグ…ほら、君も」 座っていた腰を持ち上げて俺の方へと伸ばされた手は、簡単に俺を引き寄せられるだろうに伸ばされたまま止まっている 恐る恐る近寄ると、腕を取られてリグレアと一緒にぎゅう…と強く腕を回された 肩を軽く叩かれ、頭を撫でられる 「俺のことはエレンでも、兄とでも好きに呼んでくれ。まだ答えていないようだけれど俺には、いい感じに見えるんだけどなぁ」 「……」 リグは子供の頃からあんまり笑顔を見せてくれなくて、と耳元で笑うのを、聞いていた そして俺にしか聞こえないようになのか、耳元で伝えられた 「俺が王であるうちは人の手から守れる。でも、代替わりする頃、二人は一体どうなっているんだろうね。まだ…スノア、君の気持ちは揺れている。しっかり、考えるんだよ」 「考えては、いる…」 油光を灯すランプの近くで本を抱えながらふと、言葉を思い出していた 俺一人では広すぎるぐらいの部屋は俺以外の気配はなく、設られた窓の外には暗闇が見える 人の世界に居ることを望んだのは自分なんだと、本を置いた手で膝を抱えた 頭の中で最後の言葉がぐるりととぐろを巻く この場所はリグレアが城を出て住むと用意した場所で、俺も手を引かれながら連れてこられた 家の管理をするのは二人の老夫婦 いつも本を読むか森を歩くかしかしていなくて、目的もなくふらついていた…今は目標とか、やりたいことを見つけることができている 「好き…?って」 だからこそ俺自身の気持ちと向き合わなくてはいけないんだけど、声に出すと尚更不安定に聞こえる でもこの問題も俺の気持ちも、これからのことも全て…考えなければいけないことだ 俺はどうしたいのか 「…できれば、同じ気持ちが返せればいい。でも…」 本当に、天秤に乗せた時に釣り合うようなものなのか 「……一人は怖いな」 人であることを全て捻じ曲げなければ最後までいることができないなんて だから…俺一人で決めることができない
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