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最初は驚きの連続だった
住む場所だと連れてこられた場所は、俺がいた森の小屋や魔女の住む家よりもかなり大きなもので
これは小さい方だというのはまあ、城や周りを見てもわかるけれども、落ち着かなかった
人が多いのもあるのかもしれない
夜になると聞こえなくなり日が昇るにつれて少しずつ、人の声が増え始める
食事の時間だと連れて行かれ、朝昼晩と三度も腹に物をいれないといけないと言われ、なんとか俺が言った時だけでいいと伝え
騎士団に所属しているリグレアが早くからいなくなったから、一人で森へ行き夜に戻ると伝言もなしに消えるなと言われ
…とにかく、人は人に縛られるということだけは理解した
なにをしたいとも言わなかったけれど、自分が行くときに一緒に連れて行かれて、城の書庫やリグレアとの手合わせで1日の大半が終わる
今はこんな感じだった
「ノア、今日も来ているのね。ちょうどいいわ。少しお話をしましょう?」
「…話?」
「ええ。嫌じゃないのなら。頁、進んでいないように見えますもの、嫌なんて言いませんわよね?」
昼を過ぎたあたりの書庫に毎日のように通りかかるのは、この国の第一王女でもあるアデル…アデリーナが声をかけてきた
手元に視線を落とすと少し前に開いたところから進んでいない頁
…考え事を、していたからかもしれない
強気に語尾を強めて俺へと笑いかける姿はどこか、聞いて欲しそうな目をしていた
「ミサ、まだ時間があるわよね?」
「…畏まりました。時間になりましたらお呼びしますので、少しこちらでお待ちください」
「ふふっお願いね。…いつもと違って悩んでいるようだったわ。話すだけでもだいぶ違うものよ。わたくしも、少し誰かに聞いて欲しいの」
書庫にいる時、初めに話しかけてきたのはアデルの方から
初めは俺のことをスノア様、俺はアデリーナと呼んでいた
けれど回数を重ねるうちに愛称というもので呼び合うようになっていた
彼女は俺が知る魔女のような怖さはなくて、でも初めは少し怖くて
今は目を合わせて話ができる
エレンがリグレアのことをリグと呼ぶようにアデリーナはアデル、俺はノアと呼ばれていた
「初めてだったのよ。ちょうどミサが出かけていて、ほんのちょっとだからってわたくし、自室を抜け出したの。それで、少しよろけてしまった時に支えてくれた人が、とっても素敵で。あの人はとても優しくてねーー」
とつとつと思いを口にしてはほう、と息を吐いて頬に手を当てる
うっすらと頬に赤みを落とした姿はあまり見たこともないようで、驚いた
俺じゃなくて、アデルが俺に気持ちを吐き出したかったのではないかとも思う
「一度会っただけなのにどうして、優しいと言い切れるんだ」
「あら、わたくし初めてではなくてよ?わたくし自身は何度もお会いしていますもの。だってあの人はこのお城で働いているのよ?以前まではわたくし、強い方がいいと言っていましたけれど…そんなもの些細なことね」
「…」
「んー!話すことができてスッキリしましたわ!ミサにいうと色々と面倒なことになりそうで言えませんでしたの。ミサはああ見えて暴走しがちな節があるし…まだ何も伝えていないもの。こういうことはゆっくりしたいわ……それで、ノアは何を悩んでいたのかしら」
本の背表紙を撫でながらか考える
強く、なりたかった
その手段は思ったよりも簡単に手に入って、俺よりも強かな魔女の二人に魔法の使い方を教わりながら、リグレアと手合わせをしながら体で動きを覚える
これはリグレアから誘われたことだが
上から見ているだけだった時、すでにリグレアは相当の使い手だった
がむしゃらに動いていた俺とは違って動きに無駄がない
ん…俺が悩んでいるのはこれじゃなくて
リグレアは何度も俺を好きだと言ってくれる、けれど俺はまだ何も返していない
いや、返したいとは思っている…彼の隣は、とても暖かい
けれども、この感情がリグレアが求めていた物なのかは、俺にはわからなかったんだ
どうしたら同じだとわかるのかも、知らなかった
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