番外 願いと儀式と

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流れる血を塞ぐように手を重ねてきつく掴む 願うのは、共にいるための時間 『thgi nt ayatsothtaedf oe mite...htli tnura utiool bahti wefーー』 血の儀式をもって生命の輪廻を止め、死が迎えるその時まで夜に留まるように 夜は人とは違う種族達が集う時間だと長は言っていた ぐっと籠る力が強くなる 魔言を唱え終えた後に体の外へと流れ始めた血は、巡ってリグレアのものと混じっていく まるで体を書き換えるようなものだ その証拠にうっすらと汗を浮かべて、苦悶の表情で目を瞑っている 数分ぐらいたった頃 長く息を吐いたままベッドの上に倒れ込んだリグレアの腕には、薄いけど俺と同じような紋様か刻まれていた 綺麗な赤い焦げ茶の髪にもひと房だけ白い髪が混じる ちゃんと、成功したみたいだ 「っ……はぁ、これは、きつい」 「何かおかしいところはあるか?」 「いや、ない。一体どうなったんだ」 「元の体は人間と変わりはない。ただ、生きる年月は俺依存になった」 俺が死ねば、依存している対象も死ぬ 老いる速さは極端に遅くなっても体の機能は人間と変わりはないから怪我もするし病気にも何にでもなるから 俺の言った言葉の意味を正しく理解したリグレアが微笑む いつの間にかふさがっていた手が俺の頬へ伸びて、下へ下へと下がっていく …くすぐったい 「…靴脱いで」 「また、やるのか」 「嫌なら辞めるが」 俺は少し考えて、首を振った 靴の紐を解いて膝をついて乗り上げるといつの間にかリグレアも羅足になっていて驚いた 両手を腰に回されて、強く抱きしめられる 布越しにじんわりと移っていく熱が心地よくて目を閉じて身を預けていると、口に温かいものが覆い被さった ーーキスだ 「んっ…」 初めてリグレアからされた時とは違うけれど、傷まない首に手をやって薄く口を開いた 肉厚の舌が中を探るように動き回るのを、ただじっと目を瞑って感じていた 「ふ…んん」 「っは…苦しかったか」 何度やっても慣れない 連れてこられた日から少しずつ手を出されてきたのに、うまくできない 息を吸うのが追いつかなくて背中を叩くと離れていった顔の間で細く、糸を引いて水滴が落ちていった 返事を返すように今度は頭の方へ手を伸ばして抱き抱える 近くにいないとわからないような花の香りがした 上半身を覆っていたローブを外して床に放り、一つ一つ釦と留め具を外されていく これから…やることはわかっている わかっていて止めなかった、気持ちが良かった 「(初めてだった…溺れたくなる)」 「スノア」 男らしく上を脱いだリグレアが僅かに浮かび上がる紋様の手を、下履きの隙間へと滑らせて直接触れてきた ひ、と上がりそうになった声を両手で塞ぐとますます遠慮をなくして、俺は耐えきれずに触れてくる手を汚してしまった 初めて見た時はまさか、粗相をしてしまったのかと思ったけれど…魔女は誰も教えてくれはしなかったことだった 「んぅ…いっかい、はなせ」 「どうしようか。私以外のことを考えていたようだから」 とても楽しそうな声色だ ニヤリと片方だけ上がる口端に、似合わないと頭で笑いつつ、一緒に握られる熱と動きにまた、達してしまっていた
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