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20190530
出社最終日よりも前に、調整のため一日だけ出社することになった。しかし行ってみると特にやることもない。他のひとは仕事に入ってしまい忙しそうにしている。
ひまを持て余すので、昼休憩はなるべく遠出することにした。
赤羽橋あたりから東京メトロの駅に降りたら、中が後楽園駅だったのだが、歩いていたら天王寺駅になっていた。
東京名物・乗り換えで一駅ぶん歩く。というやつである。
大阪メトロ谷町線の天王寺駅は、このまえ駅名表示の看板があたらしくなったのだが、夢の中でもちゃんとあたらしくなっていた。
そこから地上に出たら、京都の烏丸御池だった。
西にむかってぶらぶら歩く。二十歩くらいで千本丸太町まできた。
夢に千本丸太町〜円町駅の界隈がでてくるときは、だいたいいつも同じ景色だ。夢の中でぼくはそこを円町駅のあたりだと疑いもしないのだけど、じっさいには見たこともない場所だ。しかも大通り表側と裏側で建築物の高さがちがいすぎる。
大通りぞいに、カレー屋をみつけた。
中に入ると、自分以外の客はインド人ひとりだった。ネパール人かもしれない。
ここがほんとうの千本丸太町なら、立地的にはタイカレー専門店・シャムだが、
その外観は左京区の輸入食品店であり、
内装は天神橋筋商店街のカレー店・旧ヤム鐵道であり、
店員は麻布十番のタイ料理店の店員であり、
空は晴れた夏の六甲山であり、
カレー自体は無印良品である。
カウンターの二席隣に座ったインド人、いやネパール人は、ときどきなぞの満面の笑みでこちらをみて、「辛過ぎじゃない?」などと話しかけてくる。僕はあいまいに笑いかえすしかできない。
カレーを四口で食べ終えると、自転車ですぐ裏手の家に戻る。取り壊されたはずの、堺のおばあちゃんの家に、学生のころ使っていた万年床が敷いてあり、転がり込んで寝た。
起きたら、起きていた。
霜降り明星の粗品に「しょーもない人生!」とか言われる前に起きれてよかったなと思う。でも起きてからのほうがしょーもない自分がつらくなる。
あっ、隣の客は職場最寄りのファミマの店員じゃないか。
インド人かネパール人かわからない青年。298円のカレーライスに、スプーンじゃなくて箸を付けてきたのでスプーンに変えてくれと頼んだが、わかっているのかどうか、満面の笑みだった。
半年くらいすると彼もだんだん無表情になっていった。
賽の河原で石を積んでいるような表情になり、僕より先に東京から消えた。
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