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痛みの記憶
リッコちゃんとの最初の出会いは、小学三年生の時。
クラス替えで一緒になったのが、始まりだった。
女子の中で一番背が高くて、テレビアニメの戦う女の子主人公みたいに、長くて綺麗な髪と、明るくて元気で、何でもはっきりと言葉にするリッコちゃんは、みるみるうちにクラスの人気者になった。
学年一低身長で、いつも教室の一番隅っこの席で、一人で本を読んだり、誰かが持ってきてくれた花のお世話をして過ごしているようなこだまとは、住む世界の違う人だった。
そんな二人が、初めて接点を持ったのが、運動会を間近に控えたある水曜日の放課後。
理科と算数と社会が一緒にあったせいで、いつも以上に重たいランドセルを背負って、よろけながら一人きりで校門坂を下っていたら、「ねぇっ!」という呼び声と共に、ランドセルが軽くなった。
「リッコちゃんっ!?」
驚いたこだまが振り返ると、こだまのランドセルを笑顔で持ち上げてくれているリッコちゃんがいた。
「こだまちゃん、身体が小さいから今日のランドセル余計に重く感じるでしょ? 途中まで、こうしてあたしが支えてあげる!」
「……え? い、いいよ……。リッコちゃんだって、重いでしょう……?」
突然現れた人気者のリッコちゃんの優しさに驚いて、こだまが遠慮する素振りを見せたけれど、それでもリッコちゃんは手を離さず、「いいから、いいから」と、半ば強引にこだまのランドセルを持ち続けた。
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