痛みの記憶

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友達(そこ)から外されないためには、何よりも『協調』を示すことが大切だった。 『そうだね』『私もそう思う』そう言っていれば、グループからハブにされることはなかった。 中学に入ってからは、こだまは『協調』を武器にクラスに溶け込む努力をした。 そのおかげで、自分から話しかけることは出来なくても、マユミちゃんという、入学時の一番最初の席順でこだまの後ろになった子が「新しいクラスって、緊張するね」と、話しかけてくれたときに「私も、すごく緊張する」と答えたことで仲よくなることが出来た。 マユミちゃんは、こだまと同じようにどんなクラスにも必ず一人はいるような、物静かで目立たない存在だった。 無理をしなくても得られる共通点。 それが、何よりもこだまを安心させた。 入学から三日も経てば、クラスのグループはほぼ確定する。 同じクラスになったリッコちゃんたちも、相変わらずのメンバーでくっついて、さも当たり前のようにヒエラルキーの上位層に定着したみたいだった。 しかしこだまは、口数は少ないけれど、本が好きで、好きなシーンについて語る時に不意に見せる笑顔が可愛いマユミちゃんと一緒にいることが多くなった。 あの日が来るまでは……。
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