痛みの記憶

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「……ごめんね、こだまちゃん。今日は一緒に帰れないんだ……」 入学から半月が過ぎた日の昼休み。 まだ半分しか食べていなかったお弁当をしまいながら、マユミちゃんが言った。 「あれ? マユミちゃん、もう食べないの?」 「……うん。ちょっと、食欲がなくて……。それよりも、今日の帰りの件なんだけど……」 「いいよ、気にしないで。用事か何か? 」 「………………うん。ちょっとね……」 妙に長い沈黙のあと、教室のドアに視線を向けたマユミちゃんは、お弁当包みを持って立ち上がると「ごめんね」と小さな紙切れをこだまに握らせてから教室を出て行った。 とても苦しそうに見えたマユミちゃんが気になって、こだまもすぐに立ち上がって廊下に出ようとしたけれど、誰かに肩を掴まれてできなかった。 「…………リッコちゃん……? 」 振り返ると、スマホを手にしたリッコちゃんが立っていた。 「ねぇ、これ見て? マユミちゃんったら、裏でこだまちゃんのことこんなふうに言ってたのよ? 表では友達ヅラしてるくせに、ひどいよね~」 リッコちゃんから差し出されたスマホを手に取ると、こだまはもうそこから目が離せなくなった。 自分以外の女子全員が参加しているグループトーク。 その中は、こだまの名前でいっぱいだった。 『暗いし、喋んないし、何考えてるかわかんない』 『あたしなんて、この間呼びかけたらシカトされちゃったよ』 『あの子の周りだけ、ジメジメした空気漂ってるよね』
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