痛みの記憶

7/21
前へ
/153ページ
次へ
どうして? あたしが一体何をしたっていうの? 聞きたいことは山ほどあるけれど、怖くて口にはできない。 無言で震えているこだまの目の前に、リッコちゃんはキーホルダーをぶら下げた。 淡いブルーのイルカのキーホルダー。 それは五年生の時にリッコちゃんの思いつきで、それぞれ色違いで買った『友達の証』。 「こだまちゃんが悪いんだよ? せっかくあたしが友達になってあげたのに、中学に入った途端に別の子と仲よくするんだもん。そういうの、裏切り行為だよね? 」 リッコちゃんは力任せにキーホルダーのチェーンを引きちぎり、それをこだまの足元へ放り投げた。 薄っぺらいイルカのチャームが、「カチャっ」と安っぽい金属音を立てて、こだまのつま先に当たる。 「じゃあ、そういうことだから」 床に転がったバラバラのキーホルダーを見つめたまま微動だにしないこだまを置き去りにして、リッコちゃんは教室を出て行った。
/153ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加