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「太陽はいい匂いだねぇ、」
学校横を流れる川沿いの遊歩道を歩きながら、水瀬は白い腕を空に向かって伸ばした。
「そして6時間授業は飢え死ぬっ!」
眉尻を下げて笑いながら遊歩道に点在するベンチの一つを指差し、
「ここで待ってて」
水瀬はそれだけ言い残し、遊歩道脇の小道を駆けて行ってしまった。
脇に立つポプラの木が、ベンチを覆うように影を作っていて、休むには丁度良いのかもしれない。
一人ベンチの前に取り残された俺は、肩にかけていた鞄を足元に置き、木製のベンチに腰を下ろした。
どうしてあんな嘘を吐いたのだろうか。
なぜ幽霊なんて呼ばれて平然としてられるのだろうか。
湧き出る疑問と一緒に吸い込んだ空気はどこか懐かしい匂いがして、水瀬の言う〝いい匂い〟の意味が少しだけ理解できた気がした。
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