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逢瀬の森
貴方と恋に落ちた。
六月の濡れそぼる森の中、くちづけた。
湿った土の匂い。噎せ返る緑の匂い。
それと、貴方の匂い。
優しい雨に混ざったそれが、好きだった。甘かった。変え難かった。
逢瀬の森は、雨に濡れる。
何も告げづに、突然姿が見えなくなった貴方を探して、今日も一人、雨に濡れる。
貴方は私の心を勝手に奪って、勝手にいなくなって、私を勝手に一人にして。
湿った土の匂い。噎せ返る緑の匂い。
そして、私の吐息が雨に混じる。
私は今日も独り、森を彷徨う。
貴方を探して、雨に濡れる。
逢瀬の森は、雨に濡れる。
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