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 こんな障害があるなんて、思わなかった。  部活が休みで久し振りに市ヶ谷と帰る。  そこで、あの計画を告げた。 「俺とお前と甲斐と柚流(ゆずる)で、帰りに波岡駅で実に告る。実を試すから、お前もソッコー不正解だってバレないようにやってくれ」  市ヶ谷はすぐには返事をしなかった。  当たり前か。  こんな話、突然されれば戸惑って当然だ。  市ヶ谷は二・三度ためらって、溜め息をつくように答えた。 「僕は参加、したくない」 「あぁ? なんで」  理由が判らず無遠慮に問い返す。  市ヶ谷の答えは、俺には予想のつかないものだった。 「だって……、僕も実君が、好きなのに、他の人の協力はできないよ」  途端、俺は無性に腹立たしくなった。  何で市ヶ谷まで。  市ヶ谷を参加させるべきか、させないべきか。 「聞いてないぞ、何で実が好きなんだ?」  市ヶ谷はさっきよりも言い難そうに口を開く。 「いつからか判らないけど、そんなに会ってる訳じゃないけど。野木崎君に話をよく聞くから、それで」  俺の、話? 「時々会うでしょう? そうすると、話の通りだ、明るくて優しいなとか、思うんだよ」  俺が自分で確率を下げていた。  自分の愚かさに苛立ちを感じたが、同時に微妙な嬉しさもあった。  市ヶ谷は実のことを良く思っている。  俺の言葉を信じ、実の本質に惚れる。  悪い気持ちではなかった。 「わかった市ヶ谷。なぁ、もし告白で実がお前を選んだらどうする?」 「そんな訳ない」 「いや、実はお前のこと褒めてるだろ。親切だ、上品だ、親しみ持てるって言ってるじゃねーか」 「けど」 「可能性はある」  市ヶ谷も甲斐も、実に選ばれる可能性はある。  甲斐には勝てると思っていたが、付き合いが浅くてもあいつらは仲がいい。  それは、相当相性がいいってことじゃないのか?  俺が選ばれる確率は、当初の予想よりだいぶ低いのかも知れない。 「……わかった、ダミーになるよ」  市ヶ谷が可能性という言葉に惑わされたのか、俺の提案に賛同した。  俺は、自分が選ばれる可能性が減るのを自覚しながら、市ヶ谷に言った。 「ダミーじゃない、お前も正解だ」 「え?」 「もしお前が選ばれたら、甲斐には遠慮なくお前が実に告ったことにしろ。実がお前のことを好きなら、そっちのほうが実の為だ」  親切心なんかじゃなかった。難易度が高い方が、面白い。
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