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三
俺の選択は、正しいのだろうか。
昼休み。
柚流を呼び出し人通りの多い連絡通路で小声で計画を提案した。
「ついさっき甲斐から聞きました」
俺が手を回す前に、既に話が通っていた。
「先輩、いいんですか?」
「何が」
「俺、さっきまで実と先輩はデキてるんだと思ってたんで」
またしても、全くの不意打ちを喰らった。
「どっからそんな情報が」
そんなことを言われたのは初めてだった。
「中学に上がった時、俺、実と同じクラスだったんですけど、『野木崎先輩の幼馴染みだ』って二年の先輩がたくさん実を見に来たんですよ。皆さん『可愛い可愛い』言ってね」
そういえば、そんなこともあったな。
「俺、それで先輩が実をメッチャ可愛がってるんだって思って。しかも実、先輩と同じ高校に入るわで、相思相愛なんだとばかり思ってました」
「そりゃ、ただ仲が良いってだけの話だ」
本当に途中までは仲が良かったってだけの話だった。
けど俺が、変わったんだ。
高校に入って男への告白のダミーを二度やって、俺もそれが、羨ましくなった。
実が俺を追うようにこの学校に入ってきて、俺の中で実が“それ”の対象になった。
実に、俺の欲望を注ぎたい。
男友達のように下らない遊びでつるむのではなく、誰にも邪魔をされない場所で、実の他には見せない別の姿を、独占したいという気持ち。
「それで柚流? 参加するのかしないのか」
「しますよ。甲斐にも協力するって言いましたし。けど先輩は本当にいいんですか? 実との間に愛はないんですよね?」
「ねぇよ」
「なら実のアレは、先輩のこと、男として尊敬してるってことですね」
「そうだったら光栄だな」
柚流の言葉がひっかかる。
実は、俺のことを『男として尊敬している』。
最も確率が低いのは、俺じゃないか?
俺は、この計画を続けてもいいのだろうか。
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