第六部 二 実家にて

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「う~ん……。顔?」 「顔かよ!! 優子さんじゃなくてもわかるわそんなの」 「お前、その発言けっこうヤバいぞ」  晃輝はそう言って大笑いした。ただの自慢みたいになってたことに気づいて、俺はちょっと罰が悪くなった。 「俺にとってはコンプレックスなんだよそこは……」 「悪ぃ悪ぃ。まー、真面目な話、あれよ。お前の良いところは、毒吐かないところ」 「毒?」 「文句とか不満とか、全然言わないじゃん。だから一緒にいて不快になることがねーの」 「言わないか? 言う気もするけど」 「言わねーって。言ったとしても言ったうちに入らないくらい。毒がねーの」 「ふーん……。よくわかんねーけど」 「お前、あかりと一日一緒に居てみ? もう、出るわ出るわ文句と不満だらけよ」 「イヤ、戸田さんが絶対ムリなのは、高校の時点でわかってるし。でもお前は好きなんでしょ」 「文句言わない時は可愛いんだけどな~」  晃輝ははぁっとため息をついた。でも顔を見ると、しょうがねぇよな、って感じで笑っているから、たぶんそこも許容済みではあるのだろう。 「大変だな、夫婦って」 「大変よ。まあでも、子供生まれるし、楽しみも多いけどな」 「そんなもんか」 「お前とゆーこさんは? 子供とかはもう厳しいんかね?」 「まぁなー。でも俺は別に子供欲しいって気持ちもないし、そもそも結婚してもらえるかもわからないし……」 「なんで? すればいいじゃん」 「優子さんには優子さんの生き方があるから、そんな簡単には行かないよ。俺は優子さんと居られるだけで十分だと思ってるし」 「そんなもんかね」 「二人で過ごせる時間がもっと多ければいいなーとは、思うけどね……」  優子さんに会えるのは隔週末と、平日の夜にごはんを食べるのが月に二・三回。このままのペースだと、一年で何回会えるんだろうと考えてしまう。
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